台湾の人々
台湾(中華民国)の住民は一般的に「台湾人」と呼ばれますが、「台湾人」という単一の民族があるわけではなく、次のような人々(族群=エスニシティ―)で構成されています。
「族群」とは文化や習慣が共通した集団を意味し、「民族」というよりは「アイデンティティをともにする集団」というニュアンスがあります。実際には使用言語によって分類されることが多く、そこに自分の意識(これを台湾では「認同」と呼び、「アイデンティティ」「帰属意識」といった言葉が適訳だと思われます)が強く関わってきます。日常的な付き合いではあまり感じられないかもしれませんが、台湾の人々は自分がどの族群に属しているかを常に意識しており、これが社会に対しても深く作用しているとされています。
本省人
本省人とはすなわち「ネイティブの台湾人」といったニュアンスで台湾では定義されており、本省人は以下の3族群に分類されます。
・ホーロー人(河洛人・福佬人)(台湾総人口の約73.3%)
16世紀頃から戦前までに台湾対岸の福建省を中心として中国大陸から移住した漢民族の子孫を指し、台湾のほぼ大半を占める人々で台湾語の主な話者です。「有唐山公、無唐山嬤(中国人の祖父はいるが、中国人の祖母はいない)」という諺があるとおり、本省人はその歴史において原住民との通婚により混血が進んできました。
・客家(台湾総人口の約12%)
漢民族のひとつと定義される人々で、元々は中国の中原(古代中国の都があった黄河中下流域)にいた漢民族が戦乱を逃れて各地を転々とした後に南方の広東省・福建省・江西省に移り住んだのが起源とされています。
・原住民(台湾総人口の約1.7%)
漢民族の台湾移住より以前に台湾に居住していた人々です。平地原住民と山地原住民に分類され、アミ族・パイワン族・タイヤル族・タロコ族・ブヌン族などがあります。
※台湾では先住民のことを「原住民」と呼び、差別的名称ではありません。日本語での「先住民(先住民族)」は中国語では「すでに消滅してしまった民族」という意味合いになるので、ここでは台湾現地の呼び方に従って「原住民」の呼び方で統一します(なお、差別的に原住民を指す場合は、「山胞(山地同胞)」と呼んだりします)。
原住民の詳細についてはこちらのページをご参照ください。
外省人(台湾総人口の約13%)
1945年の第二次世界大戦終結以後、とりわけ1949年の中華人民共和国成立により共産党に敗れた国民党の蒋介石とともに中国大陸から台湾に移住した漢民族およびその子孫を指します。
1945年の終戦による「光復」と同時に台湾が中華民国に編入され、それまでの日本による統治から中華民国による台湾の統治が始まりました。 これにより中華民国の中国人すなわち外省人が実質的な台湾の支配層となり 、1987年の戒厳令解除まで公的な場での台湾語の使用禁止など本省人への抑圧が続きました。
現在では本省人と外省人の軋轢は政治面などで多少はあるにせよ少なくなってきているとされ、特に若い世代に至っては実生活面で本省人か外省人かの省籍を意識することの意義はほとんどなくなっているようです。
また台湾人男性と結婚した外国人配偶者は「新住民」と呼ばれます。ここ数年、製造業・建設業・家政婦・介護職などを中心に東南アジアなど外国籍の労働者も増えてきました。
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